帝王切開後の普通分娩
当院では、前回の分娩が帝王切開によるものであった方でも、普通分娩が可能です。
これをVBAC(Vaginal birth after cesarian section、帝王切開後の普通分娩の意味)といいます。専門的な見解でも、帝王切開後の分娩は必ず帝王切開でないと危険だという考え方と、帝王切開後でも、普通分娩が可能だという2つの考え方があります。当院では、後者の考え方をとっています。
当院では、普通分娩(帝王切開後の)を希望された方の90~95%が、きわめて安産で普通分娩ができております。
前回の分娩が帝王切開だった場合、次の分娩で注意をしなければならないことは、子宮破裂がありうるということです。即ち、帝王切開では子宮に切開をいれて、そこから胎児を娩出するので、その切開部位を丁寧に縫合したとしても弱くなっており、次回の分娩時の陣痛によって、そこが裂ける心配があります。
帝王切開時の子宮切開部位は、子宮下部横切開といって子宮下部の頚部と体部の境目あたりを横に切るのが一般的です。子宮体部ではなく何故この部分を切るかというと、それはVBACの安全性を高めるためです。子宮体部は収縮(陣痛)をして、胎児を押し出す役目、子宮頚部は胎児の通路になるところ、そしてその境目の部分は、分娩時には、前回帝王切開でなくても、非常にうすくなっています。そこで、その部位を帝王切開時に切ることにより、たとえその部位が弱くなっていたとしても、陣痛による悪影響がでにくい位置を切るという事なのです。帝王切開時の子宮下部横切開は、まさにVBACのためにあるのです。
しかしながら、この子宮破裂を過剰に恐れ、また分娩管理上、子宮破裂の心配をしながら綿密な分娩管理をするのは、大変なため、ご本人が普通分娩を希望されても、帝王切開にもっていく産院が多いのです。
しかし当院では、ご本人に「普通分娩でいきたい」という強い希望のある方は、綿密な産前チェックや分娩管理の下で90~95%の方がきわめて安全に普通分娩が出来ております。残りの5~10%の方も分娩途中での帝王切開への切り替えにより、すべて元気な赤ちゃんが産まれております。頻度はきわめて少ないですが、子宮破裂が仮に分娩の過程でおこったとしても、子宮下部横切開部位の破裂であれば、緊急の帝王切開によって、大事に至ることを防止できます。当院での帝王切開率は、平成28年の統計で分娩総数の11%ときわめて低率になっています。
帝王切開は、あくまで非常手段であり、陣痛を経験し経膣分娩するのがお産であるというのが当院の基本姿勢です。前回帝王切開で今回普通分娩を希望する方は、お気軽にご相談下さい。